おいかわ

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アナログ時計を置いているわけでもないのに、秒針の幻聴がする。
締切まで後1時間。これを提出しなければ留年の危機となるレポートを前に、私の手は完全に止まっていた。何度も何度も文字数カウントを開いては、変わらない数字に絶望するばかり。

「書けないんだから留年した方が良いんじゃないか」「でも留年したくない」と思考は回り、バタンとソファーに仰向けに転がった。このまま寝てしまえば終わりだ。
裏返しにしていたスマホを確認すると、通知が一つ。
推し俳優のブログ更新のお知らせだった。
そういえば来週は舞台だ。

留年したら素直な気持ちで楽しめなくなるかも、と思った私は、よし、と近くに置いていたコーヒーを飲み干す。
人間のやる気なんてそんなもの。

留年回避できたらお礼にメールを送ろうと思いながら、残り50分で書き上げるべくキーを叩いた。

9/29/2022, 10:22:14 AM