「とてもきれいな景色ですね」
オレンジゼリーをくずしたかのような夕焼けの空を背に、彼女はこちらを振り返った。
白いワンピースについた襟元がふわりと浮き、艶のある茶色の髪とともに風にゆらめきはじめる。
声をかけたのが自分だとわかったのか、彼女は長い髪をたくしあげてじっとこちらを見つめ返していた。
「先生から、あなたに呼ばれていると聞きました。
それでここに駆けつけたんです」
「………」
「どうして何も言わないんですか」
まばゆい光を放つ西日に、思わず右手を顔にかざす。
逆光で顔が見えない彼女は今一体どんな表情をしているのか、自分にはまるでわからなかった。
たそがれ.
10/1/2022, 2:56:36 PM