糸井

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辺りはどっぷりと闇に包まれていて何も見えない。

視界を与えているのは心許ない一つの蝋燭だけ。
風が少し強く吹けば消えてしまう熱を帯びた緋が、ちらちらと光と影とを生み出しては揺れている。

太陽が沈めば簡単には辺りを明るくなんて出来ない。今が朝なのか夜なのか、時間感覚も自分が生きているのかも何にもわからない。狂ったせいで眠る事も起きる事も奪われるなんてね。
まぁ人生なんてそんなものか。

「包み込んでくれる陽の光とまた出会えないのなら」

炎に触れると、瞬く間に身体を伝って地面を伝って、緋は全てを覆い尽くした。

『眠れないほど』

12/6/2024, 12:40:31 PM