「君と話していると、誇らしさを感じるよ。むしろそれを通り越して、哀れみすら感じさせるほど、君は尊いね」
「う、うぅぅう……」
そう言われて、私の胸は高鳴った。
本当にこの人は、女たらしである。
無情に恋しい。そして、哀しいのは、彼の目が生焼けの秋刀魚みたいに、どろんとしていたこと。
要するに酔っていた。
酔っていなければこんな言葉、聞き出せようはずがなかった。
どうせ、別の女と勘違いしているのだろう。
それが、腹立たしくならないのが、無性におかしかった。
ほとんど、食は取らない質である。たまに、お刺身など、食べるのが楽しい。
お酒は、飲まないが、飲めば楽しい。
今日も、ミョウガの味噌漬けに、日本酒を冷やで、飲んでいる。
ぐでんぐでんに酔って、絡まれるのが楽しい。
シラフではやっていけないような、刹那さがある。
これはこれで、良くも悪くもない。
ただ、放蕩の限りを尽くした、一晩の酒盛り。
明日もあればいいとは思わない。
「なんで、否定するの?」
と、やんわりと言われた。
「それは……」
返そうと思ったが、女中さんが来て、膳を持ってきた。
酒盛りは続く。
多分、フォアグラみたいになるくらい、詰め込まれて、そして多分吐くだろう。
8/16/2023, 10:22:22 AM