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最近雨が続いて
夜に月や星が見えない日々が続いていた

やっと雨雲はなくなり
晴天になったその日の夜
宿の窓から見上げた夜空一面に
久しぶりに姿を見る星々
少女の顔は月明かりに照らされている


―――母は星のことに詳しかった

夜眠れない時
王宮の図書館から持ってきた星図鑑を広げ
星座のことを教えてもらったことを
いまでも覚えている


あの時見ていた図鑑は
火に焼かれてもう無くなっているだろう…


少しだけ悲しい気持ちになったけど
母が残してくれた知識は確かに
私の中にある

胸に手を置き、深呼吸して
再び星を見つめれば

優しい声音で寄り添い
笑いかけてくれる母が傍にいるようで―…


どんな場所に居ようと
必ず夜の空を見上げる


時が戻らずとも
必ず―……


[星空の下で―「2人きりの旅」妹視点より―]

4/5/2024, 3:30:56 PM