涼やかな風が、甘く切ない香りを運ぶ。また秋が来たのか。ぼんやりと空を見上げ、思った。浮かぶ月は、僅かに欠けてはいるものの美しさは損なわれてはいない。月は春よりも鋭く、夏よりも冴え冴えとして、そして冬よりも蠱惑的だった。息を吸い込み、漂う金木犀の香りを取り込んだ。くらくらとする甘さに、胸の痛みを覚えた。それはいつかの、静かな恋の痛みによく似てる気がした。
10/10/2025, 10:00:27 AM