正直、変わった奴だとは思ってた。
いつだって飄々としていて、ニコニコと笑っていて、それでいてよくオレ達を観察している、そんな奴。
つり目で黒目がちの瞳は、何となく小動物のようで。
普段はある理由から見られないその眼が、妙に印象的だった。
ーーーそう言えば、同僚がよくボヤいてたっけ。
”アイツと居ると、調子が狂う”
”迂闊なこと言うと、訳が解らないまま丸め込まれる”
”支離滅裂なくせに、妙に説得力があって困る”
だけど、何故かオレにはそんなことはなくて。
寧ろ、怖いくらいによく言うことを聞いてくれたし、色々なことを話してくれた。
その時は、いつだって楽しそうに眼を細めていたっけ。
ーーーでも。
「ごめんなさい。オレのせいで、あんなことになって、ごめんなさい」
思い出したように泣きながら懺悔を繰り返すアイツを見ているのは、正直辛かった。
虚ろで、光さえ飲み込んでしまったかのような漆黒の瞳は、何故かオレに向けられていたから。
ーーーだから、初めてだったんだ。あんなにも穏やかで、”安らかな瞳”を見たのは。
それが最初で最後になるなんて、思いたくなかったけどね。
安らかな瞳
3/14/2023, 2:43:54 PM