海月 時

Open App

『ようこそ、故人図書館へ。何をお探しで?』
「特に何も。只、お話を聞いて欲しくて。」
『左様でございましたか。』
「聞いてくれる?」
『ええ、もちろんですとも。貴方様の悩みが消えるのであれば、いくらでも。』
「ありがとう。この前、親友と喧嘩しちゃって。」
『それはそれは。』
「どうやったら、仲直りできるかなって。」
『何故仲直りをするのですか?放っておけば、よろしいのでは?』
「何でって、仲悪いままだと気まずいでしょ。」
『そうですか。人間とは面倒な生き物ですね。』
「ホントにね。」
『私の独り言ですが、人間の心を通じ合わせるのは不可能だと思います。ならばいっそ、自ら縁を断ち切るのも一つの賢い生き方ではないでしょうか。』
「でもね、人って誰かが居ないと死んでしまうから。きっと世界で一番、弱い生き物だから。」
『そうでしたね。』
「だから、愛せるのかもね。」
『私には、そのような感情は芽生えませんが。』
「そういう人も居るよね。」
『出会った時よりも、顔色が良くなりましたね。』
「司書さんと話していて、心が軽くなったんだよ。」
『それは僥倖でございます。』
「親友とは何となく仲直りするよ。」
『貴方様の決断に、悔いが残らぬ事を祈っております。』
「ありがとう。じゃあ、またね。」
『またのご来館、お待ちしております。』

『他者との心と心を結ぶ事は、人生においての最難関なのかもしれませんね。』

『本日は、これにて閉館いたします。貴方様の人生というなの物語、心よりお待ちしております。』

12/12/2024, 2:17:47 PM