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なびく髪、暴れる袖、開けられぬ口。ミユは体全体で風を切っていた。しかしただ風を切っている訳ではなかった。
(ギャァァァぁぁぁぁ)
ミユはターザン状態で風を切っていたのだ。
森の中、ミユは追いかけられている白い巨体熊から逃げるため、魔法で作られた蜘蛛の糸をロープにして向こうの崖に繋ぎターザンのようにして渡っていたのだ。
(死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ)
『安心しろ!これぐらいで魔女は死なん!』
(お前、私の考えていることも分かるんか!!)
ミユの体は下の森の中へ突っ込んでいき木々にぶつかるスレスレで飛んでいる。少し足を伸ばせばおもいっきりぶつかる距離だが、足を伸ばすことを考えるほどミユには余裕がなかった。そんな中ミユはとある事に気づいた。
(ねぇ、このままじゃ崖にぶつかるよね?)
蜘蛛の糸は崖のに繋がれてある。そのまま飛んだら勿論崖の方へ向かって行くので、崖の着地できる場所に着く前に崖の岩壁に正面衝突してしまう。
『そうだな』
メイダールは当たり前に思うように答えた。
(なんでそんな落ち着いてんの。ってことはさこのままじゃ私、、、、)
『死ぬな』
(やっぱ死ぬじゃん!!!!)
ミユは一気に青ざめる。崖におもいっきりぶつかったことは一度もないが、物凄く痛いこと、ただでは済まない事は難なく想像できた。そして何より【死ぬ】という言葉が脳内を駆け巡って暴れていた。
(どどどどどどうすんの!!!)
『岩壁にぶつかる直前、そこが一番地面に近づくタイミングだ。その時のちょっと前に飛び降りる。以上』
(あんた、自分がしないからってそんな淡々と、、、)
岩壁まで半分を切っていた。ミユがサッと下を見ると地面まで大体3メートルぐらい離れていた。ミユは色々悟った。
(ねえ、これ高さ足折れない?)
『安心しろ魔女はその程度では折れん』
(ほ、本当に、、、)
『それに岩壁と全面衝突するぐらいなら足を折る方がマシだろ。』
(そ、そうだけど)
『とにかく、覚悟決めろ。タイミングは俺が言う。』
ミユは正面を向く。岩壁まで残り20メートルほど。まだ距離はあったが飛び降りないという選択肢はもはや無かった。ミユはおもいっきり鼻から息を吸う。長くゆっくり。そして口から息を吐く。岩壁まで10メートルを切った時
『今!!!』
メイダールが言った。それと同時にミユは糸から手を離した。

7/5/2025, 8:49:08 AM