───────言葉はいらない、ただ…………
あの後には一体なにが続いたのだろうか。キミは何を飲み込んでしまったのだろうか。オレは今でも偶に、あの時キミが口にしなかった言の葉について考えてしまう。
傍にいて欲しかった?……言われるまでもなくずっと、少なくともあの頃は一生を共に歩むと思っていたしそのつもりだった。
抱き締めて欲しかった?……いつだって抱き締めたかったし隙あらばキミに触れていたよ。多少強引なくらいでないとすぐに離れてしまいそうで怖かったから。
忘れないで欲しかった?……もしこれをキミの口から聞いていたら、見縊るなと怒ってしまったかもしれないね。キミとの時間は今尚鮮明に覚えているよ。忘れたくても忘れられそうにない鮮烈な記憶として刻まれている。
あの日の答えはもう何処にもない。キミはもう何処にも居ない。
なぁ、オレの手が届かない場所で目の届かないうちに居なくなるなんて酷いじゃねぇの。なぁ、オレの諦めの悪さ知ってるよな。
オレらの間に別れの言葉は無かった。それならキミはまだオレのでオレはまだキミのだろう?
『言葉はいらない、ただ…………貴方の愛の全てが欲しい。全てを抱き締めて私は逝くから、貴方は私を忘れて幸せを見つけてくださいな』
2023.08.29夜 「言葉はいらない、ただ……」#11
8/29/2023, 12:16:27 PM