猫宮さと

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《日常》
場合によっては事はかなり深刻だ。
初めの感想は、その一言に尽きた。

各地の長達からの陳情を纏め、議会にて議論を重ね、元老院からの承認を得る。
時には、その元老院から無用の圧力が掛かる。その対処にも毎度手を焼く。
それも闇の眷属に蹂躙されたこの国を救う為、と形振り構わず走り抜けてきた。
この数年というもの、日々これの繰り返しだった。

やり甲斐はあれど政敵からの妨害に疲弊を感じ、日々の色が失われつつあった時。
旅の仲間の中にかつていた相棒が現れたと知らせが入った。

しかしそこにいたのは、闇に魅入られし色を持つ少女だった。
薄く灰色を帯びた白銀の髪。紫がかった濃い赤の瞳。
それは、かつての旅路を思い起こさせるに充分なものだった。

このままでは仲間も騙される。
そう考えた僕は、自宅に彼女を住まわせ監視を行うことにした。

平和な日々がまた脅かされるかもしれない。しかし、その時は僕自身が始末を付ける。
更なる緊張が重なる中、監視生活は始まった。

彼女の行動を具に観察する。

仲間と言い争いになった僕を真っ先に庇う。
こちらの書物を読み込み知識の吸収に励む。
知人の両親の死に深く涙する。
満月へ僕に命を預けると誓いを立てる。
会話からは励ましと労りの言葉がするりと出てくる。
話しかければいつもにこやかに微笑む。

あまりの想定外の出来事が立て続き、酷く混乱している。
彼女の人物像が分からなくなってきた。
くるくると変わる彼女の表情からは、邪気は微塵も感じ取れない。

こうして日々を暮らしているうちに、不思議と毎日が穏やかに流れるようになっていた。
今日も、本部の私室で僕の終業を待つ彼女を迎えに行く。
いつものようにドアを開ければ、溢れる満面の笑みを湛えた彼女がそこにいる。
以前とは全く違う、今の僕の色鮮やかな日常。

6/22/2024, 1:48:09 PM