『宝物』2023.11.20
自宅の棚に安置されているお煎餅の缶。高校を卒業したその日に日本一周旅行に行ったときに、買ったものが入っている。
今思うと若さゆえのそれだったし、自分を送り出してくれた両親も、かなり放任してくれたと思う。
久しぶりに缶を開けてみると、各観光地のブックレットと地名の書かれたキーホルダーが入っていた。ついでに、何冊かの御朱印帳もあり、全てのページが埋まっている。
それらを集めることが旅の目的でもあったし、御朱印帳に関しては日付のわかるものがあったほうが想い出としても残ると思ったからだ。
その宝物とも呼べる品々の中に、身に覚えのないノートがあったので開いてみる。それには、日付と場所、そのとき食べたものや感じたことが書かれていて、いわゆるトラベルノートと呼べるものだった。
それを読んでいるだけで、あの頃にタイムスリップしたような錯覚に陥る。
まだ子どもだった自分に、出会った人々は優しくしてくれた。これでなにか美味しい物を、とお小遣いをくれた人もいた。その時にももらったであろう、お金もノートに挟んであった。
ひとつひとつを大切に眺めて、缶の中に収める。
また気が向いたときに鑑賞しようと蓋を閉める。
そこで笑ってしまった。
缶の上にはあて名書きのラベルが貼られていて
『たからもの』
と、実にわかりやすく書かれていた。
11/20/2023, 2:08:27 PM