SAKURA・Lemon

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私達はこの世界で終わりなき旅をしている。
空には大きな蝶が飛んで、森には精霊が住み、村の奴らは少し人間とは異なる者がいる。
君らの世界ではとてもありえない、そんなファンタジーな世界を、今日も私とカイトとラーナ、へんてこな動物とで旅をする。そして今、深い森の中の川で一休みをしていた。
「…ドラゴンの居場所は把握出来た?」
「うん!この大草原を抜けて山を登った先に洞窟があるだろう。そこに邪悪なドラゴンがいるみたいだよ〜!」
「フムフム…よぉし!!!じゃあ装備を集めてすぐそこに向かおうじゃないか!!」
「うんっ…!」
「ニョンニョン、!」
私達の目的は、この世界を自由に旅をしながら危険を及ぼす怪物やヴィラン達を倒す事。ヘヘっ正義のヒーローみたいだよね。
一休みを終えた所、できる限りの準備をしてすぐさま目的地を目指す。
「…なぁ、ルリア。」
「ん〜?なぁに?カイト。」
「…今回のドラゴン党閥は非常に危険らしい。だからその、無茶な真似したら…二度と戦わせないからな。」
「はぁいキャプテンー。心してかかりまーす。」
カイトの方は真剣に言っているけど、少しふざけて言ったから少し睨まれてしまった。
カイトの心配性?に最近ではうんざりしていた。
だってさ、私達、戦うのこれで何度目だと思ってるの?ありえないほどこの世界を救ってきたんだよ?今更そんなの考えてられないわ。心の中でカイトにグサグサ言ってやった。
「まったく、お前って奴は…。」
心の中で言ったつもりがいつのまにか漏れていたらしい。
これはまずいぞ。
「だ、だいたい。カイトはちょっと考えすぎなの!たかがドラゴンなんかに怯えてたってどうしようもないわよ!」
「怯えてなんかいない。俺はな、お前のためを思って…」
でた。私のためを思ってって言う言い訳。

「だからっそれがもういいって言ってるの!」

だんだんやり取りに腹が立ってきて、少し強めに言ってしまった。いや少しどころじゃない。かなり。
私はハッとしてカイトの方を見た。

いつものクールさもありつつ、どこか傷ついた表情をしていた。
やってしまった…。私はその場にいてもたってもいられなくなって、咄嗟にその場から離れてしまった。
「ルリ!!」
仲間の1人であるラーナが私の名前を呼んだけど、聞きもしないで走り去った。
さっきの元いた川に戻り、私はいつの間にか泣いていた。
あんなカイトにはうんざりしてる。けど、カイトを傷つけるのは嫌だ。ごちゃごちゃな感情がうるさくて、また1人泣いた。どれぐらい泣いていただろう。気づけばすっかり暗くなっていた。誰もいない森の中を歩いていたら、突然後ろから気配を感じた。カイト達…ではない感じがする。
あの怪物。ドラゴンがいた。
私は咄嗟に武器を構え、戦闘の体制をとる。
周りが暗くて前が見えず、思う存分戦えない。手が震えていることに気がつく。暗くて1人が怖いのもある。けど、やっぱりカイト達が居ないから。自信がない。怖い。助けて。
躓いて後ろに倒れてしまった。このままじゃ、やられる。
殺される…っ!。私は覚悟を決め、両手で顔の前にバリアを作る。すると、何かが前に飛び出してきた。怪物が光に包まれ、爆発音と共に倒れ込む音が聞こえた。
静かに目を開けると、そこにはラーナ達の心配した顔と、
目の前に、優しく手を差し出されていた。カイトだった。
その表情は怒っても居なく、ただただ心配しているようにも見え、焦っている表情にも見えた。
そして私はまた、カイトの胸の中で泣きじゃくった。
ごめんなさい。私はやっぱり1人じゃ無理なんだ。って。
泣いて泣いて、時間が経ち、たちまち静まり返った森。
そんな中でカイトが口を開いた。
「…ルリアが俺にうんざりするのは、良くわかってる。
嫌われてもいい。…けど、もうアイツと同じにさせたくなかったんだ…。」
昔、カイトと冒険していた一人の相棒が、一人で戦いに行って、帰らぬ人となったと言う。そこで彼との希望に溢れていた旅は終わったんだって。…
「…私のためだったんだね。」
「前からそう言っている。特にお前みたいなそそっかしいやつは。後先考えず行動するから尚更な。」
「確かに…」
ラーナが急に共感するように口を開いた。皆んなして静かな森の中で大笑いした。カイトこそ、嫌いになんかならないよ。
心が軽くなるのを覚えた。
まだまだ私たちの旅は終わらない。
明日もまた長い長い旅が始まる。

5/30/2024, 12:32:56 PM