あの時と同じ場所にて。
友人が遠慮がちな口調で話を切り出した。
「なあ」
「うん」
「去年ここでした話覚えてる?」
「んー、なんとなく?」
「あそ…まあ覚えてないよりいいや。あれから俺、真面目に考えたんだ」
「うん…?」
「だからさ、ちょっと言っていい?」
「?うん…」
「お前の心が欲しい。今は、ホントに」
「…」
驚いて言葉が出ない。
「ほら、言ってたじゃん、次はもっとちゃんとしたの待ってるって。だからこれは、その『ちゃんとしたの』、のつもり」
「…」
だんだん理解できてきて、嬉しさと可笑しさが込み上げてきた。
「ずっと考えてたんだ、お前とのこと。俺、お前とだったら、別にその、付き合っても、いいかなって…思って」
「…」
緩む口元を隠そうと顔をうつむける。
「あ、え?もしかしてあれも冗談だった!?真剣だったの俺だけ!?…あーならいいごめん!やっぱ取り消して」
「いいよ」
「え?」
「だから、付き合おってことだよ」
「へ、今なんて」
もう限界。嬉しい、可笑しい、面白い。大好き。
「おれの心はとっくの前からお前のモンだってことだよ!あん時のセリフで察せよバーカ!」
ずっと欲しかったものが、たった今手に入った。
【今一番欲しいもの】
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個人的伝説のお題。また巡ってきたので去年の話と繋げました。
去年はキザ男くん(仮名)(別にキザじゃない)目線でしたが、今年はもう片方の子の目線です。
去年の話は今でもずっと傑作だと思ってたので、続きを書けて本当に嬉しいです。
てか、真剣に考えた言葉を取り消そうとするなよ、それこそバカだぞ。
7/21/2024, 11:04:30 AM