ここ

Open App

今日は、卒業式の日。
みんなあんだけ嫌がってた制服を、この日だけはキチッと来て、学校に登校する。大人になりたいとほざいていた男子が、まだ高校生のままでいたいと嘆く。
そんな景色を、私は親友と一緒に、学校の校門のそばにある、大きな桜の木の下で見ていた。卒業式も終わり、もう自由の身となった私たちは、心の準備もないまま社会に放り込まれてしまった。
「ねぇ、信じられる?私たち、大学生だよ」
「そうだね。いつ、出発なの?」
「えっとね、明後日」
「早いね」
親友は、東京にある有名大学に行くらしく、そのために一人暮らしをするんだと言う。数字も文章も苦手な私には、到底合格なんてできないような大学だ。
「でも、あんたも結構有名な大学なんでしょ?」
「うーん、どうだろ。私、やってけるか正直心配」
私は音大に入り、クラリネットを専攻することになった。でも、数々の有名人を出しているらしいし、私もその人たちのようになれるか心配になっていた。
「あんたなら出来るよ。正直、あんたが居なかったら私、こうやって大学なんかいってないし」
そう言いながら、親友は立ち上がった。
「ほら行こ。この後、遊ぶんでしょ」
そう言って、クールに笑う親友。そういう所は、昔とは全く変わらない。
私も立ち上がって、親友と一緒に、私の大切なクラリネットを持っていつものゲームセンターへと向かった。
明後日にバラバラになるだなんて、正直実感がない。でも、別れ際は絶対笑顔でいると心に誓ったんだ。

明後日は、別れ際に、親友に引かれるくらい、手を沢山振ってやるんだ。

9/28/2023, 11:23:13 AM