木蟹村

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 中学のときの友達が、自分の部屋のことを病室って言っていた。
 近所で工事中だった空き地に家が建っていて、ははあ羨ましいねえこちとらそんなものごとにはなんの関わりもないなんて僻んでいたら、ふと思い出した。
 団地住まいだった私を、家に呼んでまでして遊んでくれた友達のことだ。私には一軒家が珍しくて、家に上げてもらっただけではしゃいでいた。
 その友達は明るくて活発で、友達が多くて、優しい女の子だった。だから聞き返したものだ。
「病室って、病気を治すための場所じゃん。ここ家でしょ?」
「そう。わたしにとっては家じゃなくて病院で、この部屋は病室なんだ」
「なんでよ」
「生きるための部屋だから」
「やっぱ家じゃん」
 思い出しても当時も、厨二病だなーと思う。
 だけどよくよく思い出してみると、あの部屋には彼女の好きなものはなかった。漫画とかアニメ雑誌とか、テレビとかが。だから私が漫画やらアニメ雑誌やらを少しずつ貸していたんだとわかった。だからうちよりもお金持ちであるはずの彼女に、私から貸していたんだって。
 今頃どうしてるかな。メチャクチャバリキャリウーマンになってるかな。それでときどき、ウッホって二次元の妄想を膨らませたりしてるだろうか。
 そうだといいな。

「病室」

8/2/2023, 1:33:59 PM