たとえ間違いだったとしても
私はあの夜を忘れない
細長くて陶器のような指が
グルーヴ感をもって蠢き
それに合わせて私の気持ちも高みへ登る
女の人でもなく
男の人でもない
ただ唯一のあの人の声は
流れるように蕩けるように甘く脳髄に響いて
退屈な私の人生に生きる喜びを実感させた
翌朝、
私は初めて
あの人が同性愛者であること、
そして形の良い頭にツムジがふたつある事を知ることになったが
正直そんな事は私にはどうでも良い事だった
しかしあの夜以来、
彼女は私を避けるようになった
すれ違う度に横目を使い
少し青みがかった白目を見ると
ああこの人にとって
私は間違いだったのかもしれないと思わされる
たとえ、
彼女にとっては一夜の間違いだったとしても
私の思いは一夜ならず、
干からびていた私の心を再燃させたことは
紛うことなき真実そのものであった
4/22/2024, 1:49:39 PM