夢を見てたい
祖父の部屋では、エアコンやファンヒーターではなく、石油ストーブを使っていた。乗せたヤカンから湯気が出ているのを確認して、僕にココアを淹れてくれたのを覚えている。
無口なひとだった。テーブルの上に散らばった、小さな板切れや細い棒を長いピンセットで黙々と運ぶ。その作業を口を開かずにとなりで見ていた。
ボトルシップ、いわゆる帆船模型だ。最初に完成品を見たとき、なぜ瓶の中に船があるのかわからなかった。だから、部品を一つ一つ小さな口を通して、中で接着して組み立てると知った時にはとても驚いた。
少しあとになって知ったのだが、作り方がいくつかあるそうだ。大きく分けてふたつ。一つは、ある程度瓶の外で組み立てて、中にいれる方法。もう一つは、全て瓶の中で組み立てる方法だ。当然ながら、前者のほうが難易度は低い。が、祖父はそのやり方をとらなかった。
早く出来上がるやり方をなぜしないのか、僕は訊いた。彼は、ゆっくりでいいんだよ、といった。その時はよくわからなかったが、彼がまた無口な作業に戻ったのを見て、僕も無口な見物に戻った。
1/14/2024, 12:50:48 AM