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「ないものねだり」


ずるい。

ずるい。

ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。ずるい。



あぁ、彼奴はいつもそうだ。
私は愚かな怪物なのに、自分は戦場で活躍した武人だと?

同じ英雄から別れた二つの側面。
王として国を治めた彼から生まれた側面が自分。
武人として、信仰者の面から生まれたのが彼奴だった。


神を信じ、国のために戦った。
なんて素敵なのだろうか。英雄として恥じるべきところなど何もない。なにもない筈なのに。彼奴は、あの男は!
あろうことか後悔をしている。
なにを後悔することがある?貴様は全て手に入れているだろう

国のために狂い、戦い、そして殺された私は見向きもされず化け物などと言われ、貶され、そしてその呪いを私だけに背負わせたくせに。


貴様は英雄としての偉業をもった「私」のくせに、
なにが不満だ。なにが気に食わぬのだ。



救えなかった妻のことを憶えているくせに。
私には、その記憶さえ、忌々しい怪物としての記憶に塗り替えられてしまったのに。

3/26/2024, 2:37:57 PM