魔工知能をご存知だろうか。
魔工知能は、魔力を貯める性質を持つ煌々石に毎朝毎晩魔力を注ぎ続け、50年も続けていれば一般人の魔力量でも知的生命体を発生させらせるというものだ。
神秘的でしかも石ひとつと外枠(多くは人形)があればできるため5年程前に流行したと思われたが、すぐに流行は過ぎ去った。
魔工知能唯一の欠点ゆえだ。
それは、大量の魔力を毎日消費することからなる過度の疲労。
これに耐えてまで魔工知能を産むのは割に合わなさすぎる、と人々はすぐに気づいた。頭のよいものだ。
…でもボクはバカだから。
やるのだこれを。ボクはデブだし、そうじゃなくても顔が悪いし、この先なにかがうまくいく気もしない。でも違う命を生み出せるなら、それこそ美少女魔工知能ができたなら、意味ある人生なんじゃないかって。
だから、君が生まれるのを、命削って待ってるから。
48年後。男69歳の時。
彼女が目を開けた。
そして、あ、と言葉を発する。
「え…ぁ…遂に…?」
男は目を疑った。48年ピクリともしなかった煌々石を組み込んだ人形が、動いて言葉を発したのだ。
「み…た、見てたわ」
「え?」
「見てたわ、私。と、ずっとあなたが私に」
彼女は焦点のないガラスの瞳でボクを見上げた。
「ほそ…く細く痩せたじゃない」
う、うんと返事をする。不思議な感じだ。
「ちゃんと…た、食べなさいよ。むりしないで」
思わず涙が溢れた。
「…いいんだボクは。君が生まれてきてくれただけで報われたんだからさ」
「な…によそれ、理由になっていないわ」
ツンデレかあ…。
人生を賭けたのは正解だった。ああもうこれは死んでもいいな、と強く思った。
9/14/2024, 11:43:41 AM