"やりたいこと"
【今の所確定している予定だ】
夕食の片付けを終えて居室に戻ると、その一文と共に直近二週間程のスケジュールが送られてきた。
兎のイラストに吹き出しで『OK』と書かれたスタンプを送信して、さらっと目を通す。
《来週休みあんのな》
【まだ曖昧だが取れる可能性が高い】
《そりゃ良かった》
この頃忙しそうに奔走している所を何度も見受けられたので、休みが取れると聞いて安堵のため息が漏れる。
《なんかやりたい事は?》
【休みの日にか】
《そう》
《折角久々に纏まった休み取れるんなら今のうちにやる事決めておいた方がいいだろ》
【それもそうか】
考えながら打っていたのか、間が空いてメッセージが送られてきた。
【論文や文献を読むのに使おうと思っている】
想像通りの返答が帰ってきて、思わず吹き出す。
《だろうな》
《本当真面目だな》
【読む時間が中々無くて読み溜めていたからな】
【お互い様だ】
《うるせぇ》
軽く言い合いをして一旦スマホを置きバスタオルと着替えを出すと、そういえばと思い出してスマホを手に取りメッセージを打ち込んで送信する。
《そういやこの間本屋行ったらお前の好きそうな小説出てたぞ》
《確か文庫》
《なんてタイトルだったか出てこねぇから後でいいか?》
【勿論】
《新刊の棚にあったから見つけやすいと思う》
《あ、けど休みの時には棚移動してるか?》
【明日の夕方空いてる時間があるからその時に行く】
【ありがとう】
《どういたしまして》
《けど「好きそう」だから好みのやつじゃなかったら悪い》
【貴方が勧める物に外れは無い】
《凄ぇ信頼で逆にプレッシャー》
【本当の事だ】
【それと小説はあまり読まないから助かる】
たとえ文字でも、直接的に言われると照れてしまう。
一呼吸して、言葉を打ち込む。
《タイトル思い出してぇからまた後で》
【分かった】
送られてきたメッセージを見てアプリを閉じスマホを置くと、傍に置いていたバスタオルと着替えを持って入浴に向かった。
──なんてタイトルだったっけ、あれ……。
6/10/2024, 1:20:59 PM