美佐野

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(愛-恋=?)(二次創作)

「“愛”から“恋”を引いたら?」
「なんやえらいジョシコーセーみたいな会話してんな、と思う」
「そう」
 即答したチリに、グルーシャはそれとだけ答えると再び視線を手元に戻した。ここはフリッジタウンにある某アパートの一室で、グルーシャが借りている部屋でもある。ただ、最近はナッペ山ジムの居住スペースで過ごすことが多く、恋人関係にあるチリが遊びに来るのもそちらの方だ。入り浸りと言えば外聞が悪いが、実情を知るオモダカから一言「ジム2階に引っ越してきなさい」と提案の形を借りた指令が飛んだ。
 そうして今日は、引っ越し前の片付けの日だったのだが。
「しっかしホンマ何もない部屋やな」
「先にそう言ってたはずだけど」
 引っ越し屋の見積もりが来るまであと1時間ぐらいだが、戻るのも面倒でこうしてモノのない部屋に二人並んで座っている。暇に任せてスマホロトムでSNSをチェックしていたのだが、いい加減飽きてきた。さもなくば、愛だの恋だの自分が話題に挙げるわけがない。
「ひと眠りすんにもビミョーに足りひんしなあ」
とはチリの嘆きである。
 改めて部屋を見渡すが、本当に何もない。せいぜいが、今二人で腰を下ろしているソファと、それに付随するテーブル、暖房器具と冷蔵庫ぐらいだ。レンジも置いていないことに、チリは目を丸くしていた。彼女曰く、一人暮らしには欠かせない神アイテムらしい。帰って寝るだけ、それすらも最近はぐっと減っていたのだ、こんなものだと思うグルーシャである。
「グルーシャが正式にナッペんジムに住むわけやし?チリちゃんもテーブルシティのアパート引き払おうかなあ」
「ジムを新居にするつもり?」
「流石にそれは無いけど、忙しい時はリーグ本部の仮眠室で寝泊まりしてるわけやし?そうやない時はナッペ山に行けばええし、部屋いらんわって」
「家賃が勿体ないのは確かだね」
 時刻を確認する。約束の時間までまだ30分程。一向に減らない残り時間に、一人小さく息を吐いた。

10/16/2025, 6:33:49 AM