白眼野 りゅー

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 君の体が病室のベッドに縛り付けられてから、もう二年になる。

 その長い長い眠りの中で、君はどんな夢を見ているのだろう。


【ここから、心だけ、逃避行】


 穏やかな顔をしている。ということは、君の心はどこか穏やかな場所、例えば二人でよく行った、木漏れ日が柔らかく降り注ぐ公園にでも行っているのかもしれない。願わくは、その幸福な夢の隣に僕がいたらいいと思う。

 たとえ、それが君の産み出した幻でも。本当の僕の心は、この病室に――君の体に縛り付けられているとしても。

 自宅とか職場とか、それこそあの公園とか、体だけはどこへだって行けるけれど、心が固定された僕。体は指一本動かないけれど、心は夢の世界を自由に飛び回っている君。

「もう、二人で全部から逃げちゃいたいね」

 跪いて目を閉じ、こつん、と君と僕の額を合わせる。そうしている間だけ、僕の心は白く狭い病室から解放されて、君の隣にいられるような気がする。

7/12/2025, 8:29:46 AM