ほたる

Open App

今でも覚えている。幼稚園生が数十人並んで各々のポーズをとる写真とともに、名前と将来の夢を書いてまとめたものがあった。女の子は揃って「ケーキ屋さん」「プリキュア」「お嫁さん」と書いていたと思う。私はたった1人、「アイドル」と書いていた。今思えばあの頃、まだ5歳くらいだった時からもう、私の人生は人よりも少しずれてしまったのかもしれない。

私がアイドルを好きだという感情は、もはや崇拝である。アイドルは夢を与えてくれる。苦しいレッスンやアンチの言葉とも戦って、その全部をステージのエネルギーに変換して歌って踊る。私はその宗教がたまらなく愛おしいし、アイドルを見ていると猛烈に胸が躍り、そして痛む。アイドルなんていうものは、アイドル側もそれを応援する側もどこかずれてしまっているのかもしれない、と思ってしまう。

歌って踊ることが好きだ。ステージの上でキラキラ輝いて用意された歌詞を歌い振り付けを踊る。そこに計算され尽くした表情管理やファンサ、一つ一つがアイドルによって違って、それが所謂美学なのだと思う。その美学のぶつかり合い、ドラフト、どの美学を良いと思ったかがファンとなる過程である。世界には数え切れないほどのアイドルがいて、その数だけ美学がある。その世界に自分も行けたらいいのにとずっと願っていたのだ。歌って踊っているとき、心の場所がわかる。私は今"アイドルを演じているのだ"という強い高揚感が私をぐちゃぐちゃにする。私のアイドルはステージ上で完璧なパフォーマンスして、目が合えばレスを送って、悲しいことがあっても悲しかったなんて言わない。毎日が、アイドルが楽しくって仕方がない!って顔で歌って踊る。それがアイドル。

幼稚園生のときからの夢、これから叶うよ。
私はアイドルになるらしい。全然信じていないけど。きっと当日のギリギリまで信じないだろう。でも、一応そういうことになっているのだ。さあ、私はどんなアイドルになろうか。

アイドルは私の光だ。
アイドルになりたいと思わなかったら対面しなかった、私のもう一つの人格だ。それが私の影をも救い、光り輝いて、私にはコレがあるから!と胸を張って生きていける。そう思わないかな?アイドルなんて好きにならなければよかったと、心の底から思ったことがあったけれど。アイドルが好きじゃなかったら今の私の人生は半分以上違ってしまうだろうと思う。私の光は、間も無く幕が上がる。その先で出会う私の偶像が、どうか最大限まで綺麗なものでありますように。私は、アイドルなのだから。

6/23/2025, 5:25:30 PM