300字小説
最後の願い
亡くなった叔父の日記を手に獣道を奥へと進む。他の遺品とは別に手紙と共に俺に送り届けられた日記。それには俺への最後の願いが書かれていた。
道はどんどん狭くなり、生い茂る樹は頭上を覆う。人里から遠く遠く離れた森が不意に開けるとそこには、その額の角が万能薬になることから人に狩られて絶滅したはずのユニコーン族の里があった。
「そうですか……あの方は我々の恩人でした」
叔父は晩年、彼等を新天地に逃がす為に尽力したらしい。叔父の死を悼む彼等に別れを告げ、叔父の墓に彼等が穏やかな暮らしを取り戻していることを報告する。
……そして。
火を焚き、日記を放り込む。燃え上がり灰になったことを確認して、俺は彼等の平穏を祈った。
お題「閉ざされた日記」
1/18/2024, 12:02:57 PM