"愛言葉"
「では、また」
「おう、またな」
用事が終わって正面玄関前まで送って、短く別れの挨拶をして少しずつ遠ざかる背中を見送り、中に戻る。
何の変哲もないただのちょっとした別れの言葉。だだけど俺達にとっては、少なくとも俺にとっては、とても特別な言葉。
「また」と言われると、たとえ数分後でも数時間後でも明日でも明後日でも、数年後でも、次に会う時まで頑張ろうって思える。たったの二文字だけど、充分すぎるくらい俺に生きる活力をくれる言葉。
それと、気持ちを伝えるのが苦手だから、「また」のたった二文字の中に《頑張れ》と《好き》を込めてる。伝わってないかもしれない。自己満足かもしれない。けれど、それでも二つの大切な想いを込めて伝える。
恐らく向こうも同じかもしれない。あいつも言葉足らずなところがあるから。あと言い方というか言葉のニュアンスが何となくだが、いつも俺と同じような感じがする。もしかしたら、俺と同じ事をしているのかもしれない。
想いを伝え合ったのは、あの時。と、二人きりの夜くらいで、普段はしり込みして言えない。あいつもそうだと思う。だから、別の言葉に想いを込めて伝え合うのが、俺達らしい、想いの伝え方なのかもしれない。
そんな中で「また」はあいつにとっても、特別な言葉なのかもしれない。
お互いの想いを伝え合う為の、特別な、大切な言葉。
多分、「また」が俺達の《愛言葉》なのかもしれない。
10/26/2023, 2:07:11 PM