君と出逢って、
世界は、少しずつ輪郭を持ちはじめた。
それまでの私は、確かに胸の中にある全てを、言葉にできないまま持て余していた。
名前を与えられなくて、
捨てることもできない、そんな感情たち。
君は、それらを勝手に拾い上げて、
「これだろう」とでも言うように鳴らしてみせた。
驚いたよ。
私はひとりではなかったのだと知ったから。
ああ、間違っていなかったのだと、
自分の中にあったものが、確かにここにあるのだと。
君の中には、奇妙な同居がある。
厳密に組み上げられた構造と、
触れた途端にすり抜けてしまいそうな感覚とが、
互いを壊すことなく、同時に息をしている。
規則に従っているはずなのに、どこまでも自由で、
自由に揺れているはずなのに、どこか必然で。
その矛盾に、私は静かに馴染んでいった。
君といると、時間の流れが変わる。
長すぎたはずの夜も、溶けていくし、
逆に、掴めなかったはずの刹那が、
指先に触れるくらいには近づく。
ひとりでいるはずなのに、
完全な孤独にはならなかったのは、
きっと君が、そこに居続けたからだ。
何も言わずとも、
ただ鳴っているだけで、
世界との細い糸を繋いでくれる。
奏、君に出逢って、
私はようやく、
自分の内側と、同じ言語で触れ合えるようになった。
題 君と出逢って、
5/5/2026, 11:08:57 AM