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「何もいらないよっ!!」
ガタッとテーブルの上にあった水がぽたぽた溢れる
「君さえいてくれたら、君さえぞはにいてくれるなら
僕は何もいらないよ!!」
すがりつくように掴んだ手は震えている、
ぜぇぜぇ肩で息をする僕の目に映る彼女はとても穏やかな微笑みを浮かべている、
ふふっ……そうよね、でもあなたの家族はいいの?

「いいさッ!!!そんな事よりもうどこにもいかないでくれよ!!ずっと一緒にいてくれよッ……!!」
荒く乱れた息の間に無理やりねじ込むように絞り出した恨み言のような懇願を聞いても、淡い蜃気楼ごしに揺らいて見える彼女の表情は僕に微笑んだままだった
えぇ、考えなくもないけれど…。仕事はどうするの?
私といる時にずっと話してた夢のことはいいのかしら?
「いいさ、いいさッ、そんな事…もういいのさ。
なぁ….ずっと一緒だよ、、ずっと、ずーっと、、」
頭痛が混ざって感じる彼女の愛撫が心地がいい
ふわふわとした光の中、僕を見つめる彼女の微笑みがすーっと淡くなっていく
「嗚呼っ!!!ああっ、行かないで……くれっ!
お願いだ……ッ!!!嫌だッ!ヤダ……嫌…だっ!」
あぁ、彼女が消える、消えてしまうッ……また僕の人生が冷たい灰色に包まれてしまう…。
最後に残った一粒を僕は震えた手の中で握りしめ、
すでに無気力となった腕を動かして、貪るように口にそれを頬張った
真っ暗闇の部屋の中、さっきこぼした水の水滴と僕の咽び泣くような荒息が染み渡っていく
これでまた…君にあえるね……

何もいらない

4/20/2024, 10:46:20 AM