夏野

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彼女は青く美しい。海の一部。
水中を自在に泳ぐ姿は、純粋無垢そのものだった。
あぁ、目を凝らさないと見失ってしまいそう…

水しぶきを上げる尾、太陽に反射する鱗が眩しい。
揺らめく水面から顔を出す。見つめられて、心臓が飛び出るかと思った…

あ、笑った。


―――これが彼女との最後の思い出だ。


島でのバカンス。
偶然助けた人魚。
次の日も会いに来たので、歌を聴かせてあげた。

でも、そう。
俺は王子様ではないし、彼女もお姫様じゃなかった。彼女はそっと海の底へ帰って行った。

現実はおとぎ話みたいにはいかないんだな。

6/26/2023, 4:53:14 PM