__天国と地獄__
「…君はきっと、天国に行けるよ。」
…静かな声で君に伝える。
「…天国があったとして…私が天国に行けたら、貴方も天国にあいにきてね…。」
震えて、今にも消えそうな声で、俺に、必死に伝えていた。
「…あぁ、…。」
その言葉を最後に、妻は息を引き取った。
元から病弱だった妻は、よく病院に行って度々検査をしなければならなかった。
俺がプロポーズをした時に、自分が病気になっているということを、全て告白してくれた。自分が、いつ体調が急激に悪くなるのか分からない状況だと言うこと。だから最初の頃は、俺に迷惑をかけたくなく、あえてプロポーズを拒否っていたらしい。
それでも俺は、めげずに伝える。君を愛す。一生守る。君にそう誓った。
そして君は、初めて俺に涙を見せた。
その後、すぐに結婚し、幸せな日々をスタートさせた。
それから、日が経っても妻の体調が悪くなることはなく、このまま、幸せな家庭を築け、子供も授かり、幸せな日々を送り続けていくのだろうか。
…そう思っていた。
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結婚をして間もない頃。
仕事に帰ってきたところ、倒れている妻を発見した。
俺は急いで救急に連絡し、妻を乗せた救急車を追いかけるように、急いで車を出した。
焦る。震える。視界がぼやけはじめた。
早くも、一週間後、妻は天国に旅立っていった。
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妻が亡くなって数ヶ月が経った。
あれから、君のことで更にいっぱいになっていた。
もういないのに。この世を探し歩いても。
俺は、まだ君に、何もしてあげられていない。まったくもって。…
突然、玄関前のポスト口から一通の手紙が入れられていた。
読んでみると、病院から来たもので、妻からの手紙だった。
"私は貴方に、残り少ない人生の中で、沢山愛を貰いました。たった数ヶ月の貴方との幸せが、一生の愛で、貴方との日々が天国のようでした。貴方は、私が居なくなってから、新しい人と隣に立つのでしょうか?それとも、私がいなくなって、まるで地獄にいるかのような日々を送るのでしょうか、?私がいない一生を、貴方にはそこが地獄であって欲しい。酷いですよね。だから、貴方にはそこが天国であって欲しいんです。どうか私を忘れて、新たな幸せを築き上げて下さいね。
___天国で待っています。"
読み終えた後、涙で滲んだ手紙を気にせず、何度も何度も読み返した。涙が落ち、字が歪む。
気がつけば、泣き叫んでいた。
会いたい。また、君に会いたい。
辛かったよな。
苦しかったよな。
ごめんな。
君は言ったよな。君がいない日々を俺にとって地獄であってほしい…ってね。
俺は君みたいに天国に行けるか分からないけど。
君は、最後に俺に幸せになって欲しいって言ってたけど。
幸せになれねーよ。
俺にとって、ここが地獄だから。
「…今から、会いに行きます。」
__天国と地獄__
5/27/2024, 12:45:13 PM