立ち上る黒煙に君の影を見た気がして胸を締め付けられた。
きっと長くは続かない、そう確信はしていた。
ただそっと、君と交わす言葉が、君と共に過ごす時間が少しでも多ければいいと望んだだけだった。
きっとそれが、すべての始まりだったのだろうけれど。
いつからか後ろ指を指される様になった。
トイレへと呼び出されては閉じ込められることも増えた。
靴がなくなることなんていつものことだった。
教科書やノートは使えなくなるからやめてほしかったけれど、それが終わらないこともまた、いつものことだった。
それでも二人で一緒に居られるならば、それは間違いなく幸せだったのに。
君は僕を置いて逝ってしまった。
黒い服を着て、何事もなかったかのように列に参加してはまだ背中へと感じる視線。
そんなものを向けられたところで、もう意味はないというのに。
何も知らないであろう君の母親が潤んだ瞳を下げてそっと会釈する様に何故だか吐き気を催して。
こんなはずじゃなかった。
こんなつもりじゃなかった。
こんな……。
いくら言葉を紡いでも、もう何も意味を成さない。
ここに君が居ないことがすべての答えなのだから。
あれから三回年を超えて、見慣れた景色でさえ少し形を変えた。
君が知っている僕はきっともうどこにも居ないのだろう。
まだ、君の墓には一度も行けていない。
あれから少しして、誰も僕に触れなくなった。
まるでそこに居ないかのように平穏な日々が巡った。
君が居なくなっただけで、世界が変わるのだから不思議な話だろ。
そう問い掛けても、やっぱり返事はない。
もう三年。あっという間に過ぎた時間を僕はまだ動かせずにいる。
それでももう、終わりにしなきゃいけない。
だからこうして足を運んだ、でもまさか君の母親に会うとは思わなかった。
立ち竦む僕を見て、口元を少し震わせて喉を震わせて出てきた言葉は僕をその場から逃げ出させるには十分だった。
まさか知られているだなんて思わなかった。君と、僕の関係を。
たった一夏、君が僕を置いて逝くまでの一夏のことなど、今更知られる訳がないと高を括っていたのだ。
遠くから息を切らした声が僕を必死に呼び止める。
どうしてそこまでするのかわからない、聞きたくもない、それでも自然と足はゆっくりになっていく。
まるで君が、話を聞いてくれと言っているようで。
肩を上下させる僕に追いついたおばさんは、もっと息を切らせていて、それなのに少し焦ったような手つきでポケットを探ってはそのまま一枚の封筒を僕へと差し出した。
そのまま受け取ってみれば、宛先に書かれている自分の名前を誰が書いたのかは一目瞭然で。
その瞬間、目尻が熱くなる気がして同じくらい嫌気が差した。
僕を勝手に置いて逝った癖に。
死んでも尚、僕の心を掴んで離さないのか。
君は本当に身勝手だ。
言いたい言葉も伝えたいこともたくさんあったのに、あるのに。
言えないまま、伝えられないまま苦しむこの胸を自分は一人抱えて生きていかなければいけないというのに。
それでも君の望み通りになってしまうのだろう。
僕は君をこれからも思い出し続けるのだろう。
君が震える指先で紙に記した呪いに呪われ続けるのだろう。
この先も君のことをずっと、
" きっと忘れない "
8/20/2025, 6:46:48 PM