『タイムマシーン』
人を信じるとはどういうことなのだろう。相手のことを疑わず、私のことだけを想ってくれていると思うことだろうか。相手のあやまちを窘めて直してほしいと訴えかけることだろうか。殴られても蹴られてもすべて許すことだろうか。死んでしまった今ではよくわからない。
彼は浮気相手の女と相談した結果、私を山奥に棄てることにしたようだ。警察にすぐ相談してくれたなら、死んでなお恨みを持つこともなかったのに。
「タイムマシーンがあったらなぁ。こいつと付き合う前に戻りたいよ」
彼は私との生活に不満があったのだと語り始めたが、同情を誘うためか自分には非がないという内容に変えられていた。助手席からわかる、かわいそう、と気持ちのこもっているようないないような相槌が聞こえる。私なら、タイムマシーンがあったらどうするだろう。もしも過去に戻っても恨みは抱いたままで何も知らない振りをできる気がしない。それならば死んだこの身で恨みを晴らすほうが遥かにいい気がする。信じ合っているように見えるふたりから土を被せられながら、私はふたりの未来をひたすらに呪うことにした。
1/23/2024, 3:18:33 AM