―夜景―
しんと静まったビルの屋上。
見下ろすと、眼下ではもう夜だと言うのに
ざわめきが絶えない。
ふぅ、と今日何度目か分からない溜息をつく。
なんて綺麗な景色なんだろう。あまりに凄すぎて、
どういう言葉で表現すればいいのか、分からない。
はぁ。
意識した訳でもないのに、勝手に溜息が出た。
これはこの夜景に感動したためのものか、
――それとも行き場のない疲労のためのものか。
この景色、本当は君と見たかったんだよ。
なんて、元カノに言えるわけがないよね。
またゴミを見るような目をされるのも嫌だし。
最近、何もかもが上手くいかない。
例えば…あぁ、やめておこう。
また自分で自分が悲しくなる。
何もかもが上手くいかない。そんな経験、誰にだってあるのが
普通だと思う。けど、僕はその期間が長すぎたんだ。多分。
あぁ、隣に君さえ居てくれれば、綺麗だねと言って、
じゃあ帰ろうか、と終われたのに、
今日は、もうここから戻れない。
帰る場所は消してきた。
こんな自分がみっともないし、嫌いだし、泣きたくなるけど、
最後は泣かないことにするよ。君に笑われないためにも。
そう思いながら僕は…
『ゴミのような人生、もう十分楽しみつくしたつもりだから、
期待するのもほどほどにして、そろそろお暇するよ…神様。』
――キラキラと眩しい闇夜に消えた。
9/18/2022, 12:31:22 PM