ののの糸糸 * Ito Nonono

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No.23『クリスマスの朝』
散文 / 掌編小説

「結局、いつもと変わらない夜だったな……」
 思わず独りごちる。隣に眠るのは恋人じゃなく、愛猫の白猫、クロだ。朝起きてみたら、彼女がイケメンに変わっていた的なファンタジーな出来事もなく、もちろん、枕元にプレゼントも置かれてはいなかった。

 クリスマスイブの夜だからといって、特別なにかがあるでもなく。ただ、仕事帰りにコンビニで、苺のショートケーキとフライドチキン、ノンアルコールのシャンパンを買った。
 SNSを開けば、たくさんのメリークリスマスが溢れているが、ただそれだけだ。そのうちのいくつかはわたしに向けられたものだけど、クリスマスに便乗したフィッシング系のDMのほうが多かった。

 今年のクリスマスは週末だというのに、わたしは週末こそが忙しいアパレルショップで働いている。恋人と別れたのはもう5年も前の話で、クリぼっちを満喫するつもりでいるけど、やはりちょっと寂しい。
 イケメンに変わってくれなかったクロの頭を撫で、いつものように仕事に行く準備をするために布団から出て、
「……くしゅん!」
 くしゃみをひとつ。クリぼっちを満喫する前に、取りあえずは仕事に向かった。

お題:イブの夜

12/25/2022, 1:39:32 AM