NoName

Open App

【sweet memories】


僕らは ただ
ずっと
眠りについていたかった

布団の擦れる音

窓から覗く
夕暮れに浮かんだ飛行機

二つの揺れる呼吸

学校のチャイム

保健室のカーテンは
この世界から隔離するようだ

何もないことが
素晴らしかった

君は僕のようで
僕は君のようだった

ただ、隣にいるだけで
それでいい

足早と下校する
同級生の声は
僕らを急かす

真っさらに
包まれていたい

どんな色にも
染まりたくない

僕らが抱く小さな反発は
二人の秘密のようだ

真っ白に
溶けていたい

ただ、なにも
変わりたくなかった

隣同士
手を握っているだけで
それでいいというのに

カーテンの外側は
目まぐるしい

いつか忘れてしまっても
今日という
無垢で静寂なときは
僕らの胸に
咲き続けるのだろうか

染まってしまう前に
僕らだけの鮮やかな花を
探しに行こう

不確かな世界を
ぼくら二人で
そっと抜け出そう

夕暮れは
歩く僕らを
包み込んでいた

5/2/2025, 4:33:19 PM