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『こんな夢を見た』

私は暗闇の中を歩いている。
なぜこんな暗闇に身を置いているのか、
理由はわからない。
しかし私の歩みが止まることはなかった。
なぜなら、歩く私の後ろを着いてくる何者かの存在に、
私は気付いていたからだ。

その何者かは、
獣のようでもあり、人のようでもあり、
そのどちらでもないであろう事は安易に想像できた。
形状し得ない未知なる者。
濡れた足音がひた、ひた、と闇に響き、
荒い呼吸の音が耳にべたりと纏わりついてくる。

私はひどく怯えながら、絶対に追いつかれまいと
ただひたすらに歩を進めている。

目的地もわからずに進んだ時、
程なくして暗闇の中に一筋の光が見えた。

「出口だ!」

そう思い走り出した瞬間、私は膝から崩れ落ちた。

思わず視線を移し、驚愕した。
私の足は、読んで字のごとく球体関節人形の四肢に
成り代わっていた。

やっと、やっと外に出られるのに。
動け動け動けと足を何度も何度も強く叩いたが、
足は痛みどころか自分の物である感覚もない。

刹那、私の後をついていた何者かの足音が止み、
そいつが背中の薄皮一枚程まで
近づいていた事を直感した。

心臓がドッと張り裂けんばかりに痛くなる。
荒れた呼吸の音が背後の何者かのものなのか、
自分のものなのか、既にわからない。
後ろを振り向けない。
涙が溢れる。
嫌だ。
いや






暗闇は静けさを取り戻した。

1/23/2022, 10:47:00 PM