ノイズ

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ピンポーン

玄関のベルが鳴った。大智は洗ってる皿を置き玄関に向かった。

ピンポーン

もう一度ベルが鳴った。もう店は閉めたのに誰だろうと思いながら扉を開けた。だがそこには誰もいなかった。外はもう深夜で薄暗い街灯でかろうじて見えるぐらいだった。大智は玄関から顔を出して周りを見回してみたが人影は見当たらなかった。ベルが故障したのだろうか、今までこんなことは一度もなかったが大したことは無いと思い店に入った。

それから10分後くらい経ったあとまたベルが鳴った。またかと思い椅子から立った。扉を開けると誰もいない。周りを見ても人の気配は全くしない。なんだよやっぱりベルの故障かと思い扉を閉めた。

店の片付けも終わり帰ろうと身支度していたらまたベルが鳴った。これで確定だ、ベルが壊れているのだろう。大智はベルを無視して着替えを始めた。すると途端に扉が勢いよく開いた。だが誰も来ない。そのままキーと音を出して扉は閉まった。大智はさすがに恐怖を覚えた。身を縮こませて玄関から目が離せなかった。

この店は大智の父が亡くなってから引き継いだものでまだ初めて3ヶ月程度だった。だがこの3ヶ月間こんなことは一切なかった。誰かのイタズラかそれとも幽霊か、そんなことを考えた。大智は恐怖で動けない。

どうしようと思った時ピンポンピンポンピンポンピンポンドンドンドンドンとそれを嘲笑うかのようにベルを連打する音と同時に扉を叩く音もした。これには身の危険を感じた。もともと大智はホラーが苦手なのだ。そのため店をやることにした時は近くに移住することに決めた。夜遅くなっても近くだと夜道を歩かなくて済むからだ。それでも毎晩家に帰る時は憂鬱なのだが。

そんな大智にとってこのピンポン連打は凄く応えた。もう一生このままでじっとしておこう、今日は帰れなくていい。この店で今いる場所で寝よう。そして三角座りになって身をつぶった時、いきなりドアが開いた。スタスタと2人分の足音が聞こえる。大智の体は震えきっていた。

「あのーすいません誰かいませんか」

とその1人が言った。誰なんだ、こんな夜中になんで人が来るんだよと思いよく見てみると制服のようなものを着ている。

「あのー警察です。誰かいませんか」

なぜ警察が来たのかは分からないが、いったん姿を現すことにした。

「あ、あのーいます」

大智はゆっくりと立ち上がって言った。警察は驚き懐中電灯を大智に向けてきた。「誰だ、ここで何してる」と聞かれたので正直に店の店主ですと答えた。

「こんな夜中にどうしたんですか?」

と大智が聞いた。

「それがですね。さっき通報が入りまして、包丁を持った男がこの店に入っていったと言うんですが何か知ってますか?」

「いや何も知らないですよ。でも不思議なことがありまして」

とさっきまでの不気味な体験を正直に話した。

「それは怖かったですね。それなら最初に扉が開いた時に入ってきたと言うことは無いんでしょうか?」

「扉は開いたんですが誰も入ってきては無いと思います。足音なんかしなかったんで」

「そうですか。なら一応店の中見せてもらってもいいですか?」

「いいですけど」

警察はひと通り調べたようで一息つき「何もいないですね、ご迷惑おかけしました」と言い帰っていった。








12/21/2024, 12:45:25 AM