夏子

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父が亡くなったのは約15年前…

毎朝の散歩に出たきり、生きて帰って
来なかった……歩きながらの突然の別れ

同い年の母は気丈な人で、取り乱す事なく
淡々と葬儀に向かって動いていた…

ただ……自分が経験してわかった事は
あまりに衝撃的な突然の別れは、夢を
みているようで感情がフリーズしてしまう

多分、母も悲しむ余裕もなく時間に流されていたに違いない……

父の四十九日が終わり、しばらくたった
春先に私は母を温泉に連れ出した

母娘して温泉に入ったのは学生以来で
すでに70代半ばに差し掛かっていた母の
裸を目にするのは本当に久しぶりだった

山間の静かな保養施設の温泉は、私たち
母娘の貸切となり、流すお湯の音と時折
鳴る物の当たる音だけ……

まだ、日が落ちる夕暮れ時にふと視線を
上げた先には、母(君)の背中……

「こんなに華奢で弱々しかったかな…」

たるんだ背中…お尻…細くなった足…

あきらかに老人となった母親の後ろ姿が
今もはっきりと目に焼き付いている
正直……現実に戸惑ってしまったのだ

あの時から、心に誓った……

今度は、私が守る番だと…世話も掛けず
旅立った父の分も一緒に、最後まで
必ず私は貴方(母)のそばにいて守る…と

長い時間が過ぎた今も……
私の気持ちは一層母に寄り添っている


2/9/2025, 10:52:14 AM