Frieden

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「好きじゃないのに」

この宇宙を救うべく突如として家に住みつき始めた自称マッドサイエンティスト。こいつが来てから何日経っただろうか。
そう思っていたある日、ミントグリーンの髪の彼(彼女?)は聞いてきた。

「やあキミ!!!この星では生まれた日を祝う習慣があると聞いたよ!!!キミの誕生日はいつなんだい?!!」
あー、誕生日は2月17日だよ。自分は投げやりに答えた。

誕生日。自分はいつも、どこに行っても除け者扱いで、まともに祝ってもらったことなんてなかった。
だから、誕生日が来たところで、年を一つとってしまったくらいにしか思えなかった。

「ふ〜ん。意外だね〜!!!もっとジメジメした時に生まれたんだと思ってたよ……って冗談だから睨むのはやめたまえ!!!悪かったって!!!」

「チョーカガクテキソンザイ」もそういうものに興味があるのか、などと考えているうちに、自分は誕生日を迎えた。

はぁ。また歳をとった。そう思って目を覚ましたあと、居間に向かった。
「おはよう!!!今日はキミの誕生日だというのに顔色ひとつ変わらないね!!!嬉しくないのかい?!!」

「あ!そうそう!!!今日はキミのために朝ごはんも特別仕様だよ!!!ほら、見たまえよ!!!ケーキをイメージして作ったイチゴと生クリームのサンドイッチだ!!!」

「ジン類は皆ケーキが好きなんだろう?!!だからキミも喜ぶと思ってね!!!ほらほら、口にしたまえ!!!」

別にジン類全員がケーキ好きじゃないのに、とか考えつつ自分はマッドサイエンティスト特製サンドイッチを口に運んだ。旨い。

「ふふん。このボクが腕によりをかけて作ったからね!!!味はピカイチに違いない!!!そうだろう?!!」

ああ、旨いよ。今まで食べたどのサンドイッチよりも。
……ありがとう。

「ハッハッハ!!!驚くことなかれ!!!プレゼントはまだまだあるんだぞ!!!」

そう言いながら、昼にはまるでお子様ランチみたいなランチプレートを、晩にはハンバーグを振る舞ってくれた。

ん……?ハンバーグを焼くための鉄板なんかうちにあったか……?

「ああ、気にしないでくれたまえ!これはボクのポケットマネーで購入したものだよ!!!キミも好きに使ってくれて構わないからね!!!」

「それから……誕生日おめでとう!!!」
クラッカーを鳴らして、ホールケーキまで用意してくれた。

「こんなに食べられないかもって??でもせっかくの誕生日なんだから、雰囲気作りは大事だろう?!!もし食べられなくても安心したまえ!!!残りは全部ボクが頂くからね!!!」

自分はこいつとケーキを囲んだ。
今まで食べたどんなケーキよりも美味しかった。

「あ、そうそう!これをキミに渡さないとね!!!」
そう言って、最新鋭のPCとミントグリーンのテディベアを自分に渡した。

いや、ありがたい、けど……流石に使いこなせないし、受け取るのも憚られる……。

「ん??そんなに高価なものなのかいこれ??ボクはイマイチこの国の通貨のことを理解していないからね!!!そこはあんまり気にしないで、好きに使ってくれたまえ!!!使いこなせないのならボクが使っちゃうよ!!!」

そう言いながら、あんたは早速PCを改造し始めた。流石マッドサイエンティストだ。

その様子を横目に、自分はあんたの髪とお揃いの色をしたテディベアを見つめた。特別ぬいぐるみは好きじゃないのに、とても嬉しい。可愛いな、このテディベア。

誕生日に初めて食べたホールケーキ。
初めて貰った誕生日プレゼント。

今までの人生で一番幸せな誕生日だ。

ちょっと恥ずかしいなんて思いつつ、自分は言った。
「本当に、本当にありがとう。最高の誕生日だよ。」

「んー?なんか言ったかい??まぁ、気に入ってもらえてよかったよ!!!来年に向けて、ボクもまた準備をしておくね!!!」

来年も、こんな風に誕生日を迎えられたらな。
そう思って眠りについた。

3/25/2024, 4:33:24 PM