ミミッキュ

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"逃れられない"

 多少のいざこざはあれど、少し時間置いたらどちらからとも無く謝って仲直りする。
 どちらも真面目だからお互いの嫌がる事はすぐに修正して直してるし、お互いの苦手な事はなるべくさせない。避けられなければ必ずサポートに回れるよう準備や調整をする。
 普通の人から見れば『仲の良い友人又は親友同士』。一部から見れば『仲の良いカップル』。
 付き合い始めた時よく『距離感バグってる』って言われるけど、別に普通だと思ったから直さずに過ごしてたら呆れられて、次第に言われなくなった。
 もっと一緒にいたい。生涯を共に過ごしたい。
 けれど、そう思っていても、俺は提案された《条件》を飲み込み、首を縦に振って付き合う事に賛成した。
 条件付きのお付き合いなのだ。その《条件》があるから、それはできない事だと、その妄言を何度も掻き消している。
 《条件》と言っても、どちらかと言うと《期限》だがお互いそれを《条件》と呼んでいる。
 それは、『再生医療が完成し、消滅した患者を復活させるまでの間』。
 期限による条件で成立させたお付き合いなのだ。
 この事は、俺たちの交際を知っている者にも言っていない。
 そんな事言う必要は無い、となって『付き合う事になった』という報告のみ。それが正解だった。
 各々驚きながらも明るいムードの中で、そんな残酷な条件の上での交際だなんて言える訳がなかった。
 今、少しずつだけど、完成に近付いている。
 まだまだ先は長い。底無し沼や真っ暗闇の洞窟のようにゴールなど見えないけれど、近付いている気はする。
 この《条件》が達成され別れる事になったらどうするか、今のうちからある程度決めた方が良さそうだと思う。
 自分達の心の整理の仕方。
 頭では分かっていても、完全には受け入れられそうにない。どう折り合いを付けるか、お互い話し合う必要がある。
 その時になってからじゃお互い変に引き摺ってしまいそうな性格だから、慎重に考えるべき事。
 俺は交際を決めた時から覚悟はしている。似たような性格だから恐らく、《条件》を提案した時から覚悟を決めていると思う。
 せめてゴールが見えてきたら、恋人関係解消のその後についてしっかりと話し合える時間を設けなくては。
 どんなに嫌でも、逃げてはいけない。
 その《条件》の下に成立した交際なのだから。

5/23/2024, 2:26:37 PM