Ryu

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「おい、そこの若いの」
「え?…私?今年50になりますけど?」
「わしに比べれば若い若い。ところでおぬし、気付いておるかの?地球温暖化が、おぬしのせいじゃということに」
「…ん?何の話です?」
「だから、地球温暖化じゃ。おぬしが世界中に展開しておる」
「世界中に展開って…おじいさん、熱中症で頭やられちゃったんじゃないの?早く家に帰った方がいいよ」
「まったく自覚無しか…おぬし、ここ数年、好きなアイドルがおるじゃろう」
「え…ああ、いるけど、それがどーしたの?」
「地球温暖化の原因はそれじゃ。推しへの熱量が大きすぎるんじゃ」
「…何言ってんの?」
「おぬしの推しへの愛が強すぎて、この星のトータルバランスにインパクトを与えとる」
「もっと分からん」
「詳しいことはわしにも分からん。神様だって万能じゃない」
「神様?あんたが?…てゆーか、神様は万能なんじゃないの?」
「それはおぬしらの勝手な思い込みじゃ。万能なら、こんな殺人的な暑さ、とっくに何とかしとる」
「人類に与えた試練かと…まあいいや、で、何が言いたいの?俺に推し活をやめろってこと?」
「そーゆーことじゃ。聞き分けがいいな。もっと抵抗されるかと思ったが」
「やめるとは言ってない。でも、地球が滅んだら推し活も出来なくなるし、最近、お金も体力もキツイから、そろそろ考えなくちゃと思ってたんだ」
「そうか、それがいい。言ってみるもんじゃ」
「なんか、そうとなったら急に気持ちが冷めてきたよ。気が楽になったっていうか、解放されたっていうか」
「執着しすぎてたんじゃないのかの。思い入れが深いと、何かと頑張りすぎてしまうもんじゃ」
「なるほど。この際、熱中するようなモノをすべて手放してみようかな。もっと自由になれる気がする」
「よし、神様からの助言じゃ。おぬし、煩悩を捨てて放下せよ。…決まったな★」
「なんかよく分かんないけど、まあ、ありがたいお言葉として貰っとくよ。じゃあ、もう行くわ」
「うむ。永遠に励めよ」

最後のセリフはさらによく分からなかったが、それはさておき、私にそんな力があったとは。
人類代表ってことなのか?
まあ、いずれにせよ、地球をこれ以上、灼熱の星にする訳にはいかない。
私のあらゆる熱を冷まして、クールなダンディになろう。
私にはそれが似合ってる。

…その後まもなく、地球が約一万年振りの氷河期に突入することになるとは、たとえ神様にだって分かるまい。

7/27/2024, 2:08:51 PM