ハクメイ

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どこにも書けないことなんて
生きてりゃ絶対生まれてしまう
それが雪の様に降り積もり
そこは雪原となった

一つの、人型の足跡がその雪に形を残していた。
それは奥へ、奥へと続いていた。
その人物は、一つの大きな石碑の前で立ち止まった。
革のブックカバーがかけられた文庫を、厚い上着から取り出し、石碑の前に、雪の上に置く。
数秒黙祷をし、その人物は自分の足跡を頼りに、来た道を引き返した。

雪の風に吹かれ、ペラペラとページが捲られる。
そこには、たくさんの文字が、脈絡なく、無差別に書き連ねられていた。
やがて雪の風が、それを呑み込み、その本は雪と一体化してしまった。
誰かに見られるべき文字は、死んでしまった。

お題『どこにも書けないこと』

2/7/2026, 2:38:55 PM