「君が見た景色」
人は伝える術を数多持っている。
文字、絵、声、五感を駆使する事で、人は他者の経験を自身の中に具現化できる。
特に精巧な絵であれば、作者と同じ景色を見たと言っても過言ではあるまい。
しかし、それらの方法を使っても、絶対に共有する事ができない景色がある。
それは死の寸前の景色だ。
死ねば、何も伝える事はできない。
死後に何かを伝えるには、死ぬ前に遺しておく他無い。
けれど、死ぬ寸前の景色は、死ぬ寸前にしか見ることはできない。
死の瞬間を記した文献は数多く存在するが、そのどれもが実際に死の寸前の景色を見て記したものではない。
ああ、死んでいった数多の先達よ、あなた達は最期にどんな景色を見たのか?
8/14/2025, 12:59:34 PM