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面白い仕事をしろよ、とは初めての上司の言である。
ある一定の年齢特有の、好奇心と、これまでの経験と知識から、無から有を産み出すのが得意な人だった。
見た目から想像できないが(失礼な話だが、イカつい顔に金のチェーンはいけないと思う)、几帳面で義理堅く、堅実に仕事をこなしてしまう人だった。
多くの失敗談も聞いたが、それ以上に面白そうだからと飛び込んで、柔軟に仕事に組み込んでしまえる、その姿がとてもカッコよかった。

後を追いたくなったのは、必然だったかもしれない。
そうして飛び込んだ仕事には、やっぱり面白くない事務作業や、やりたくない関係者調整、経験不足でどうにもならない交渉事などなど、ごまんとあって。
今のところ、追い立てられるように作業をこなすだけで精一杯である。

そんな中でも、ほんのひとかけら、面白くするにはと考えてしまうのは、やっぱりその人の影響だろう。

自分よりずっと年上のその人が、新しい知識を吸収するのをやめないから、追いつくための努力を止めるわけにいかない。
本当に勘弁してほしい。
けれど、同じ舞台に上がって、少しでもその人の話の内容がわかれば、もっと面白いかもしれない。

今日も、真似っこをいつか自分のものにできるよう、キーボードを叩いている。

6/20/2023, 2:20:32 PM