「そういえば先生ってさぁ、没作の原稿用紙とかずっと持ってるよね。捨てなくて良いの?」
いつものように部屋に入ってきた彼に、そう言われた。
確かに、いつの間にか溜まった没作の原稿用紙はなんだかんだ今も引き出しの中に眠っている。
捨てないと、とは思うけれど、中々捨てられない。
「そうだね…なんか、溜まっちゃって捨てるタイミングが分からなくなって」
「ふぅん、そっか」と、彼は案外聞いてきた割には素っ気ない。
「まぁ、捨てなくても良いんじゃない?いつか先生の遺書みたいなものになると思うし」
「めちゃくちゃ失礼じゃない?それ」
そう言うと、彼は子供のように喉を鳴らして笑った。
「だって、先生遺書とか書かなそうじゃん!」
そう言われたらそれまで。言い返せなかったのが悔しい。
「とにかく、先生にどうしても捨てられないものがあって良かったぁ!」
揶揄うようにはぐらかされてしまった。
8/17/2024, 10:34:55 AM