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『明日、もし晴れたら』

「あっついな~、雨降ってくれないかな」
 太陽が真上で燦々と光り輝いている。季節は夏で今年は猛暑続きだ。
『あぁ……うぁ、あぁ』
「うおっ冷たっ、あーきもちいいー癒されるー。視覚的にも触覚的にも涼むなー」
 私には背後に女性の霊が憑いている。夏場はよく首筋に彼女の手を当てて、熱った身体を冷やしてくれる。視覚的にも白く涼しげで存在が怪異でもあり、涼しく過ごすことができている。
「先週も晴れ、昨日も晴れ、今日も晴れ。晴れが続いて気温が上がるし、湿度も高い。もう嫌だー、仕事したくない。営業回りなんて真っ平ごめんだ‼︎」
 茹だるような暑さで思考回路はショートした。もう、何も考えられない。そもそも、不要不急の用事でない限り外出を控えろとニュースでも言ってる。何故、私は炎天下の中スーツ姿でいるのだろう。
『ぅうぁあ、うあ』
 背後霊が全身で抱きついて私を冷やしにきている。キミって本当に優しいな、何言っているか分からないけど同情してくれてるんだろうな。背後霊によって冷やされた体温と、彼女の心の温かさを知り冷静さを取り戻す。
「明日、もし晴れたら対面じゃなくてオンライン通信でやり取りしよう」
 うん、そうしよう。背後霊もそうした方がいいって頷いている。そうだよな、取り憑いてる人間が死んだらたまったもんじゃないもんな。よし、人間生きててなんぼだ。
「帰りにかき氷食べて帰ろうか」
 彼女は両手をあげて喜んでいる。表情は髪の毛で隠れて分からないが、その様子が何だか可愛いなと思ってしまった。

8/1/2024, 10:30:26 AM