まず始めに好きな花を選ぶ。よく吟味した、色のついた花を選ぶ。はなびらと茎と葉とを分けておいて、たんねんにほぐす。よくよくほぐして、星の屑と区別がつかないくらいになるまでほぐしたら、それをまた煮詰める。煮詰めて、まっしろい砂糖をよく磨いた銀のスプーンですくって3はい落とす。
また煮詰めてぐつぐつ云い出しても思考を止めちゃいけない。弱火でじっくり考える。砂糖を焦がしてもいけない。銀のスプーンとよく澄んだつめたい月の海の水をカップ1はい用意し、スプーンの先につけたそれを水に入れて固まったら頃合である。
しばらくして砂糖に花のいろがついた頃になったら、つぎに月下美人についた露を混ぜてやる。(この時は急がないとすぐ固まってしまうのでよく注意をするように。)混ぜ終わって、多分にシャボンを閉じ込めたような泡の中に想像力と知識とがちゃんと閉じ込めてあるかを確認して、薄く円に落とす。この時やさしい意味を乗せてやるとたべやすくなる。( 型に流すのは厳禁、注意。言葉とは型に嵌るのがだいきらいだからだ )
2時間かそこら冷やせば、言葉は完全に成り立つ。さうして言葉とは紡がれる。時間と手間をかけた言葉がいっとう甘くておいしい。そして何より云いたいのは、言葉というのに不可能は存在しないことだ。
6/10/2023, 2:01:18 PM