Mey

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私が高校生だった頃、私の青春は部活動だった。
ギター・マンドリン部。マンドリンは知らない人もいるだろうし、形状は知っていても実際に音色を聴いたことがない人も多いだろう。
そんな知る人ぞ知るギター・マンドリンには全国大会があって、私の高校は全国大会出場の常連校だった。吹奏楽部出身者には馴染み深い、コンクールの評価形式は金賞、銀賞、銅賞であり、当然私たちも金賞を目指して闘志を燃やしていた。全国大会金賞の常連校の私たちは、先輩たちが築いた連続受賞を逃途絶えさせるわけにはいかなかった。

2年生の全国大会。私は大阪城ホールでの演奏中、マンドリンの1stパートの後ろの方で、アップテンポなその曲に四苦八苦していた。
自分たちの出番が終わった後、他校の演奏を観客席から聴いて思ったのは、自分たちは難曲に挑戦したということ。他校の演奏は私たちと同等か同等以上の実力のように思えた。
全出場校の演奏終了後、結果が発表される。祈るような先輩を横目に、私はステージをじっと見つめる。
結果は銀賞だった。ああ、やっぱり。私は目を瞑った。
先輩や同級生のすすり泣く声が聞こえる。
自分がもっと頑張れば、とも思えなかった。朝練も午後練も土曜日も夏休みも毎日音楽室で練習していた。練習のない日はマンドリンを持ち帰って自宅でも練習した。部員はみんなそうしていた。
だから、もう、この結果は仕方ないんだ。

女子高生30人は口数少なく観光バスに乗り込み、それぞれ車窓を眺めた。
出発してすぐだったか、スタジアムが見えた。スタジアム周辺で野球のユニフォームに身を包む、坊主頭の団体も。
白いユニフォームは土に汚れ、日焼けした筋肉質な男子学生の集団は私と同じくらいの年に思えて---彼らは泣いていた。腕を目元で覆い立ち尽くす部員。頭からタオルを被り、膝まづく部員。一人で泣く部員、慰め合う部員たち。
緑の木々が繁る木漏れ日の道を私たちを乗せたバスはゆっくり走る。
いつのまにか私の頬に涙が流れていた。
どうして泣いているんだろう。
理由もわからず、濡れた頬をハンカチで拭った。



あの日の景色

7/9/2025, 9:30:58 AM