凪灯

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夢で逢えても仕方がないと言うけれど。
貴方の微笑みや、絡めた指先の温度だけでも。
愛おしいと感じたあの頃の感情を今でも鮮明に憶えている。
夢でよかった。
夢がよかった。
本当の貴方と逢ってしまえば。
一度沈んだ想いが溢れ出して収拾がつかなくなりそうだもの。
涙で枕が濡れてしまったことは秘密にしなくちゃ。
「寂しかったんだろ、お前」なんて。
貴方の掠れたその低い声に言われてしまえばもう。
私はきっと貴方から抜け出せなくなる。


あぁ、でも。
貴方のくつくつと喉を鳴らして笑う声だけは。
貴方の隣で聞きたかったと思ってしまうのは。
矛盾しているのかもしれない。


5/19/2024, 5:22:17 AM