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12/31「良いお年を」

「よいおで〜す」
「としおで〜す」
「「二人合わせて良いお年をで〜す」」
 くだらん。くだらなすぎて笑える。
 仲間内の忘年会がまさかの大晦日で、なんとヒマ人が7人も集まった。昼間から酒が入ったカラオケルームは騒がしいを通り越してやかましい。
『お時間ですが延長されますか?』
「あ、いいです出ます〜」
「えーまだ11時じゃん!」
「馬鹿、電車なくなるだろ。オレんち田舎なんだから」
「ちぇ〜」
 残りの連中で宴会続けるわけじゃないのがうちららしい。会計を済ませて外に出る。
「じゃあね、良いお年を!」
「あと40分しかないじゃん」
「ばーか、残り何分だろうが来年はいい年にすんだよ!」
「いいこと言った!」
「いや普通」
 酔っ払いたちの笑い声がこだまする。こいつらのおかげで、今回も良い年を迎えられそうな気がした。

(所要時間:10分)



12/30「1年間を振り返る」

「今年もいい事なかったな〜」
 仕事なし。彼女なし。クリスマスもイベント何もなし。そんな年の瀬。
「でも、もうちょっとだよ」
 見た目はほんの小さな少年。こいつと出会ったのは今年の1月。そこから全ては始まった。
「まあそうなんだけどさぁ。もっとこう、楽しい1年を過ごしたかったよな〜」
 どっこいせ、と斬馬刀をコンクリートから引き抜いて構え直す。目の前の巨大な影が、吼える。
「いっちょ、やりますか」
 この世界を救う、最後の戦いを。

(所要時間:7分)



12/29「みかん」

 どうも。みかんです。
 出オチ? まあ、そうですよね。
 こたつの上にいます。今、皮をむかれてまさに食べられるところです。
 皮をむかれてもまだみかんですけど、食べられたらみかんじゃなくなりますよね。何て呼ばれるんですかね。消化されてなくなるから何でもいいですかね。
 まあ食べ物なんで食べられるのは仕方ないんですけど、ひとつだけ心残りがあるんですよね。
 美味しいのはわかってるんですよ。絶対甘くてジューシーな自信ありますから。
 でもね、食べられると、食べた人の笑顔、見られないんですよ。
 だから耳を澄ますしかないんですよね。え、みかんに耳あるのかって? 物のたとえですよ。
 んじゃ、そういうことで。

「美味しい〜!」

(所要時間:5分)



12/28「冬休み」

 冬休みは忙しい。
 学校に行ってた子どもたちが1日中家にいる。それも元気いっぱいだ。家族全員の昼ご飯も作らないといけない。
「俺も冬休み欲しいなぁ」
 そう独りごちると、妻が
「主夫の腕の見せ所だね」
 と返してきた。俺が去年言ってたセリフだ。
「ちくしょー!」
 脚にまとわりつく息子たちを担ぎ、俺は大掃除の続きに戻った。早いとこ掃除のやり方教えて戦力になってもらうしかない。

(所要時間:6分)

12/31/2023, 10:44:30 AM